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化学物質情報調査における JAMP-IT(情報流通基盤)のメリット

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現在、欧州REACH(リーチ)規則(※1)などを背景とした、化学物質情報調査業務はサプライチェーン全体で管理コストを増やしています。

そのような中、JAMP(Joint Article Management Promotion-consortium)アーティクルマネジメント推進協議会が中心に ITを利用した業務合理化を推進しており注目されております。

本稿は化学物質調査業務の問題点とJAMP-ITを利用したソリューションについて重要なポイントを分かりやすく、サプライチェーンの視点で概要を簡単にご説明いたします。

1. 環境情報調査面での問題点

これまで環境調査業務は、各社各様の仕組み(個別対応フォーマット)に対応する形で行なわれるのが主流でした。

そのため、同じ型式でも企業ごとに個別に対応しなければならず、各社バラバラの環境調査基準に従い、各様のフォーマットに記入し、時として各社バラバラのウェブ画面に登録しなければならず、お客様ごとのシステムに熟知しなければならないなど業務を逼迫してきました。

さらに懸念材料としてSVHC(高懸念物質)がますます増加しており、今後も増え続ける点が挙げられます。

[図-3:環境情報調査面での問題点]

2.SVHCの増加

下の図はREACH規則における SVHC数の推移を表しております。2008年に15物質から始まり、1年当たり平均20物質程度と緩やかに増加し、2011年12月に合計73物質になりました。

ところが2012年は新たに63物質が追加される予定となっており、合計で136物質に急増します。

[図-3:SVHC増加の推移]

最終的には1500物質といわれるSVHCの追加が2011年までの実績(20物質/年)程度では、全て出揃うまでに70年以上かかります。加えて、CSRやコンプライアンスという観点からも、2012年以降も大量に追加される可能性は否定できません。
したがって、これらの情報整備は急務であると言える状況となっているわけです。

3.JAMP-ITとは

図の中央部にあるJAMP-GP(※3)は「AIS」「MSDSplus」という環境調査の共通フォーマットをインターネットでやり取りする交換機の役割を果たします。

[図-3:JAMP-ITとは]

「AIS」は成型品・部品用、「MSDSplus」は原材料用のフォーマットで、JAMPのサイトからフリーでダウンロードできます。

JAMP-GPを中心に各ユーザがAS(アプリケーションサービス)を介してこのフォーマットのデータをやり取りできます。ASは主に以下の機能があります。

ASの主な機能
(1)JAMP-GPに接続し「AIS」「MSDSplus」を依頼する機能
(2)「AIS」「MSDSplus」を保管・管理するデータベースの機能
(3)化学物質含有量を製品ごとにまとめて集計する機能

ASは商用ASと独自ASがあります。商用ASは日立、NEC、富士通がベンダーとして参加しています。商用ASはいわゆるクラウドサービスですので、これを利用する企業はシステム開発などの初期費用が必要なく、導入も簡単でシステム運用を即開始できます。独自ASとは自社専用に独自開発されたASのことです。

このJAMP-GPとASを含めた全体をJAMP-ITと呼んでおります。

4. 関連する企業全体における個別フォーマットの問題点

これは個別対応のフォーマット(各社各様フォーマット)で環境調査を行なった場合の情報の流れを表した概要図です。条件としてはあくまで1つの型式に対する調査情報の流れで、製品がEU圏への輸出に関連している事を前提としています。

[図-4:個別フォーマットの問題点1]

サプライチェーンの一部を抽象化したもので(A)が川中の成型品・部品メーカー、(B)が商社、(C)が川下のセットメーカーです。(A)の左側にはさらに川上の原材料メーカーがありますが、簡略化するためにあえて省略します。

本題に移る前に、個別対応フォーマットの定義をはっきりとさせておかなければなりませんが、例えばJGPSSIフォーマット(※4)のような汎用性のあるフォーマットでも、個別に記入しなければならない様な書式は、ここからの説明では個別対応フォーマットと位置づけます。また、AISフォーマットも企業が独自の環境調査管理基準を義務付けて運用する場合もまた個別対応フォーマットと考えてください。

情報の流れとしては、最初に川下の企業(C)が発信元となり調査依頼が(B)、(A)へとリレーします。さらに、(A)からの回答が(B)、(C)へと帰ってくる流れです。

企業ごとに矢印が対応している点に注目してください。これは、1度調査が完了している型式でも顧客ごとの独自のフォーマットに合わせて対応しなければならないからです。(A1)と(B1)の間の矢印が6本になるのは、(B1)が(C1)、(C2)、(C3)の3社分の矢印を引き継いでいるからです。ということは単純に(B1)が(C)の川下企業50社に納めていたら100本、100社なら200本ということになります。このように1つの型式でもエンドユーザ数が増えればその分だけこの矢印が増えるという点に留意してください。

加えてSVHCが増加し商品の成分と一致するたびにこの往復のリレーを繰り返さなければなりません。情報の次数が非常に多く複雑になってしまうところに「ムダ、ムラ」があります。

多品種で多くの顧客を抱えるメーカーの場合、このまま個別対応を繰り返しては間に合いません。

5. 関連する企業全体におけるAIS、JUMP-ITのメリット

[図-5:AIS、JAMP-ITのメリット1]

これはAISフォーマットでJAMP-ITを利用した場合の情報の流れを表した概略図です。先ほど同様あくまで1つの型式に対する流れです。
先ほどと違い、発信元が川中(A)になっていて情報の流れも(A)、(B)、(C)とリレーするだけになっています。また(A)、(B)のJAMP-IT側に向かう矢印がそれぞれ1社に対して1つしかないところに注目してください。この矢印の数はそれにつながるユーザ数が増えても原則として増えません。また、JAMP-IT側から(B)、(C)に向かう矢印も1社対してそれぞれ1つしかありませんが、これも原則として増えることはありません。

要するに、AISを最新版のSVHCで一度JAMP-ITに登録しておけば、JAMP-ITに接続しているユーザはその型式のAISをASから取得するだけなので、原則としてその型式のAISに対しての調査の依頼はなくなることになります。

SVHCが増加し商品の成分と一致した場合、川中の(A)がAISを更新すれば、この左から右へのリレーをたどるのみとなります。

6. 一連の各企業内部における個別フォーマットの問題点

[図-6:個別フォーマットの問題点2]

これは個別対応のフォーマットで環境調査を行なった場合の流れを(A)、(B)、(C)、各1社だけに絞り込んだ詳細図です。このように営業部門から品質管理部門(※)に情報が流れるのが一般的ですので、実際、詳しく見ると情報の次数が増えさらに複雑になります。

※企業によっては品質管理部門が業務部や購買部だったり、営業部が直接依頼したりとまちまちですが、とにかく詳細は概要図より複雑な形態になることは間違いないでしょう。
依頼から調査書が返ってくるまでの矢印の次数を数えると、⑩または⑫ステップになります。この手順の中で一番リードタイムを要するのはもちろん物質含有調査(A-6)ですが、それに加えてこれだけ次数が多いとどこかで情報が滞留しやすくなります。また、伝言ゲームのようなミスが増えることも明白です。当社も実際3ヶ月程度の期間を要して回答を得ることも珍しくありません。

概要図でもご説明したとおり、既に調査が完了している型式でも、別の顧客からの依頼は顧客の要求に即したフォーマットに対応し、回答書を作成しなければならず、同様にこの情報リレーを繰り返さなければならないという点も思い返してください。この図では調査済みか否かの分岐点(A-5)から「YES」に流れる側の導線がそれにあたります。この回答を個別対応フォーマットで作成する作業も非常に高負担です。

また、図には記載しておりませんが、顧客ごとの化学物質管理基準に対するガイドラインを都度チェックしなければならないという仕事も大きな負担としてのしかかっています。
さらにはSVHCリストが改版されるたびにこのリレーを繰り返さなければなりませんので、SVHCの今後の増加予想を考えると、このままでは国内のサプライチェーン全体が疲弊して競争力の低下につながる恐れがあります。

商品に対して環境調査を含めたコストが利益や利便性を上回り、販売中止に追い込まれる可能性も懸念されます。

7.一連の各企業内部におけるAIS、JUMP-ITのメリット

[図-7:AIS、JAMP-ITのメリット2]

これはAISフォーマットでJAMP-ITを利用した場合の情報の流れを(A)、(B)、(C)、各1社だけに絞り込んだ詳細です。ASは日立TWX-21を利用している事を想定しております。
各社各様のフォーマットの場合と違って、営業部門がなくなっているところに注目してください。

各社各様のフォーマットの場合は矢印の次数が⑩または⑫ステップのどちらかでしたが、JAMP-ITを利用する場合は②、④、⑦ステップのいずれかに減っています。(コンピュータが担当している矢印は次数から除外しております。)

AIS、JAMP-ITを利用した場合の概要図は右向きの矢印のみでしたが、詳細は新規調査の場合のみ左向きの矢印が発生します。
まず(C)が(B)の提供側ASに対してAISを依頼するとしますと(C-①)同一型式のAISが(C)の入手側ASか(B)の提供側ASに登録されているか照合します。照合に一致した場合、(C)は即AISを入手できます(C-②)。

一致しない場合、(B)がJAMP-GPからその依頼を受けます。(B)は次に(A)の提供側ASに対してAISを依頼します(B-②)。このときも同様に同一型式のAISが(B)の入手側ASか(A)の提供側ASに登録されているか照合します。一致したら(B)はAISを即入手し、(B)の提供側ASに登録します(B-③)。登録すると自動的に(C)の入手側ASにAISが送信され、登録通知メールが(C)に送られます(C-④)。

これら全ての照合に一致しない場合、初めて(A)に調査依頼が届きます。(A)はこれを受けて調査(A-③)、AISを作成し(A-④)、(A)の提供側ASに登録します(A-⑤)。登録すると自動的に(B)の入手側ASにAISが送信され、登録通知メールが(B)に送られます(B-⑥)。この後は(B)、(C)間も同様にリレーします。

川中の(A)が常にイニシアチブを取って最新のSVHCに対応したAISの更新を行っていれば、左向きの矢印は新規の依頼のみで、JAMP-ITはこれらの要求がどこからきたのかという情報を保持するため、2回目以降は(A-③)、(A-④)、(A-⑤)、(B-⑥)、(C-⑦) の順に右向きの矢印の手続きを繰り返すだけになります。概要図が右向きの矢印のみになっているのはこのためです。
また、各社各様の化学物質管理基準のガイドラインはJAMPの管理基準で行なうことが前提となりますので、原則的にチェックは不要となるはずです。

8.まとめ

[表-1:リードタイム比較]
(表-1)はあくまでも高木商会における経験則ですがAISフォーマットでJAMP-ITを利用した場合と各社各様フォーマットのおよそのリードタイムを表したものです。

[図-8:JAMP-ITの狙い]

このようにJAMP-ITを利用することで煩雑化した化学物質調査情報の流通を統合し、管理を集約化することが可能となります。しかし、既にお気づきのとおり、これらの合理化を実現するためには、サプライチェーン全体がこの共通ルールに如何にコミットするかが重要なポイントとなります。サプライチェーン全体がJAMP-ITに参加し、競争力の維持に努めていただければと存じます。

【参考資料】
「JAMP情報流通基盤の利用ガイドライン」 社団法人 産業環境管理協会
「海外の環境規制が我が国機械工業に及ぼす影響についての調査研究」 社団法人 日本機械工業連合会

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JAMP-IT AIS REACH規則

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