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知らないと怖い電源トランスの思わぬ落とし穴

Product Search(プロダクトサーチ)

電源トランスを使用する目的として、主に①供給電圧と負荷機器の要求電圧を合わせる。②電源供給側と負荷機器側を絶縁する。この①②を目的とし、様々な供給電源と負荷機器に合わせてトランスを設定しています。
しかし、今までは正常だったのに、突然トラブルが発生し「トランス自体の不具合か?」と原因を追究した結果、「トランスの選定」や「設定ミス」が要因だったという【思わぬ落とし穴】にはまってしまった事例をしばしば目にします。
このようなトラブルが起こってしまったら、設計者の責任問題にも発展しかねません。そうならないよう、次に示す3つのパターンを基に改めて考えてみます。

~落とし穴その1~ 60Hz用のトランスを50Hzの地域で使用した場合の不具合

世界各国の商用電源周波数

ヒーター制御回路上へのトランスの設置

使用周波数60Hz(日本国内では関西地方、海外では北米など)用のトランスを50Hz(日本国内では関東地方、海外では欧州など)で使用した場合、トランスがうなる、過熱するなどの状態になります。電源電圧変動によっては、最悪の場合、鉄心飽和=焼損に至ることもあります。

【原因】
60Hzに対し50Hzでは、トランスの磁束密度が1.2倍になります。これにより、トランスの鉄心に発生させる磁束の限界を超えた場合、軽微な状況では、うなりや過熱ですが、基準電圧の1.1倍またはそれ以上の電圧が印加されるなどの悪条件が重なった場合は、一気に鉄心飽和状態になり、過電流が流れて故障・事故などが発生します。

【対策】
トランスの仕様書・表示で周波数の確認をします。60Hz用トランスは50Hzで使用できません。もちろん50Hz用のトランスは、60Hzで安全に使用できます。但し、インピーダンス電圧や電圧変動率が増えます。

~落とし穴その2~ 位相制御などの回路上に設置するトランスの不適合

サイリスタによる温度制御

ヒーター制御の電源電圧が200Vで、ヒーターへの供給電圧を2~30Vなど低い電圧で設定する場合はよくあることです。ヒーターへ電源を供給する温度調節ユニットと負荷となるヒーターの間に電圧変換トランスを設置し使用した状況において、そのトランスから異常音(ウナリ)が発生したり、トランスの温度が設計値を超える(最悪焼損もあり得ます)などのトラブルが起こることがあります。

【原因】
位相制御や分周制御された電源が通常設計のトランスに供給されたために起こることがその理由のひとつです。通常、トランスは交流正弦波の電源供給を前提に設計されています。
これがあまりにも一般的な常識となっているため、当該使用のような場合にも、トランスを要求するユーザーがその使用方法に合うトランスの設計を要求せず、供給するトランスメーカーが通常設計のトランスを納入したことによります。

【対策】
通常トランスは、交流正弦波の電源供給が前提でこれ以外の場合は、見積もりやご注文時にその旨をトランスメーカーに指示していただくことが必須です。
それにより、トランスメーカーは、磁束密度の設計変更などにより使用目的に適合するトランスの製作が可能になります。なお、ユーザーからの指示がない場合でも、お引き合いいただいたユーザーの製品、トランスの電圧・容量などから使用目的を推測し、その確認をするサービスがトランスメーカーには求められます。

~落とし穴その3~ 60Hz用のトランスを50Hzの地域で使用した場合の不具合

2次側デルタ結線と誤った結線

3相トランスのデルタ結線(当該説明では2次側を想定します)において、指定電圧タップに外部配線を接続しているのに、表示と違う電圧が発生してしまうという事象があります。
例として、当社製品3SD-10KH(入力スター結線380/400/440V、出力デルタ結線200/220V 10kVA)で考えます。

【原因】
トランス巻線のデルタ結線切替え接続を行わずに外部配線のみ指定タップに接続してしまったことがその理由です。3SD-10KHは製品出荷時、2次側200Vでデルタ結線されています。220Vで使用する場合は、まず、220V(タップ)端子でデルタ結線を完結し、そこから外部配線すると全負荷時に設定電圧が出力します。しかし、200V端子でデルタ結線を完結し、220V端子に外部配線するといわゆる、「辺延長結線」となり、この場合の出力電圧は無負荷時に約238Vが出力されてしまいます。

【対策】
仕様書または現品表示などで結線方法の確認を行い、デルタ結線でタップがある場合は、使用するタップ電圧端子でデルタ結線を完結してから外部配線接続することを、配線作業者に理解していただくことが重要です。

3相トランスの巻線の結線方法には主にスター結線、デルタ結線があります。スター結線は使用するタップに外部配線を接続すればよく、電圧切替えタップが多い場合に利便性があります。デルタ結線でタップ電圧切替えがある場合においては、使用するタップ電圧端子でデルタ結線を完結してから外部配線接続となり、スター結線と比較すると配線作業は増えますが、高調波電流をトランス内部で循環させて外部に出さないので、高調波が少ないというメリットがあります。

(株式会社高木商会発行 PSMOOK vol.112 豊澄電源機器株式会社 基礎知識:第1回より)

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