制御機器、電子部品、IoTプロダクツでソリューションを提供する専門商社

English中文(簡体字)

ケーブル・ハーネス加工は高木商会へご相談ください

CONPROSYS®での農業ICT化 —大和コンピューター

Product Search(プロダクトサーチ)

農業×ICTで匠の技を継承

株式会社大和コンピューター(以下、当社)の主たる業務は、業務系ソフトウェア(販売管理・会計管理など)の開発を中心としたソリューションを提供するシステムインテグレーター(SIer)です。

今回は、その当社が取り組んでいるICTを活用した農業「i-農業®」を紹介します。

ICTを活用した農業への取組み

2009年2月に静岡県袋井市のメロン農家(近藤農園:25a)に業務委託という形で農業に参入しました。メロン農家へ栽培委託を始めて2年が過ぎようとした時、実際に農家として農 業参入しないと本質は見えないと判断し、当社が農家として参入することにしました。

2011年5月に社員3名がまさに畑違いのメロン農家へ弟子入りし、2011年9月に定款も変更し農業法人として農業生産を本格的に開始しました。2012年6月には耕作放棄地(88a)を 借り、自社で20aの施設園芸ハウス(BigRoots)を建て、そこではトマト養液栽培を開始しました。

今回は、現在実証事業を行っている「メロン養液潅水システム」についての詳細を紹介します。

構築の背景

袋井市は東海道五十三次の京からも江戸からも28番目にあたり、東は掛川市、西は磐田市、北は森町に接している人口8万7千人の市です。代表的な農産物は米、お茶、メロンで あり、マスクメロンの産地です。

当社は、この袋井市でメロン養液栽培を2009年より取り組みました。最初は養液の濃度は一定でタイマーで潅水時間を指定して養液潅水をするシステムを購入して利用していました。温室の部屋ごとに栽培ステージが異なるので、メロン農家の要望でそれぞれ養液の濃度を変えることになりました。Raspberry P(i ラズベリーパイ)とArduino(アルドゥイーノ)を用いて部屋ごとに養液の濃度の設定ができ、また日射センサーを元に潅水回数を制御できる養液潅水システムを構築しました。

2015年には、試しに1棟を少量培地のポット栽培で、ドリッパーで養液を潅水するシステムに変更しました。理由は、①少量培地なので養液をダイレクトにコントロールできるということは、「水掛け10年」と言われる匠の技のノウハウをシステム化できる可能性があること。②土からポット栽培に変えることで重労働である蒸気消毒による土作りからの解放が期待できるという点です。

ポットの根

農林水産省「平成28(2016)年農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業」(以降、実証事業という)に応募したところ採択されたため「メロン養液栽培による循環型農業確立コンソーシアム」として実証事業をスタートしました。

実装

各種センサー情報をクラウド上に集約するにはまずセンサー情報を収集する所から行います。空間と土壌の情報(温度、湿度、CO2、土壌温度、土壌湿度、土壌EC値)をセンサー から収集して、クラウド(AWS:アマゾンウェブサービス)にデータをアップロードします。メロン養液潅水システムのセンサー情報(日射計、流量計等)も同様にクラウドにアップロードします。

潅水装置の耐候性・汎用性強化、キャパシティの確認をRaspberry PiとArduinoで行うと、高温、高湿度のガラス温室では、錆などが発生して故障することがあります。そのため耐環境性に優れたコンテック社のリアルタイム制御コントローラー「CONPROSYS® PACシリーズ」を採用しました。グローバル市場で採用が進むソフトウェアPLCエンジン「CODESYS」(ドイツの3S-Smart Software Solutions社製)を搭載し、ラダー/SFC/ファンクションブロック/STなど、国際標準規格(IEC61131-3)のプログラミング言語でアプリケーションを開発可能です。

CODESYSの開発言語は複数あり、当社はC#言語に似ているST言語で開発を行いました。当社はソフトウェア開発会社でもあるので、ST言語で開発できるのは非常に便利です。コンテック社のCONPROSYS® PACシリーズは産業IoT向けコントローラーであるためガラス温室の高温、多湿な環境下でも安定して稼働できます。またスタックタイプということで、今後ボイラー、CO2発生装置、窓の開閉等の制御を行う際にも必要に応じてI/Oモジュールを拡張することができます。

CODESYSの開発は初めてでしたが、コンテック社に開発方法のご指導など大変ご協力をいただけたので、苦労はしましたが開発することができました。

クラウド化に当たり、クラウドサービスはAWSを採用しました。AWSには多様なサービスがあり、本格的なIoTの開発経験が少なかった我々にはぴったりでした。設計しながら開発するというスタイルにもAWSは非常にマッチしました。

CONPROSYS®(PLC)の情報と各種センサー情報をAWSとやり取りするために、Raspberry Piをサーバーとして利用しています。AWS上では、各種サービスを用いてセンサー情報の表示、グラフ化を行い、養液の潅水設定情報もクラウド上で設定、変更可能としています。タイマー潅水や手動潅水の機能も作成しました。このクラウド化により、遠隔での運用サポートを実現。協力農家さんも外出や旅行中にスマートフォンなどのモバイル端末で設定を変更することも可能となりました。

今回のシステムは下図のように構築しました。

図1:システム構成

図1:システム構成

図2:AWSを利用したシステム構成

図2:AWSを利用したシステム構成

システム導入の効果

① 土壌消毒による土作りからの解放

少量培地のポット栽培により、土作りの時間が不要になるので、重労働から解放されて栽培回転数の向上が図れます。

② 収量の向上

土耕栽培では、株間を広くとり隣の木と栄養の取りあいにならないようにする必要がありましたが、独立培地のポット栽培では光合成の可能な範囲での密植栽培が可能であり、ある 農家では土耕栽培の25%以上の収量向上を実現しました。

③ 養液潅水の自動化による作業量の減少

メロン栽培は「水掛け10年」と言われるほど匠の技が必要とされています。今回構築したメロン養液栽培システムを用いることで、日射比例の自動潅水などの制御により、新規参入者 でも栽培を実現しました。実際には「NPO法人やくわり(障害者福祉サービス事業所)」が新規参入者の立場でメロン栽培企業として新規参入し、1作目からJA遠州中央のメロン品評会に出品できるようなメロン栽培に成功しました。

他の農家からも毎日の水掛けが適切に自動化されたことで、作業が非常に楽になったという声をいただいています。このように導入効果がみられたため、ぜひ他の農家への導入を拡大していきたいと考えています。

今後の展望

今後の展開としては、人的ミスの検知機能等や協力農家の要望を取り入れた、より使いやすいシステムとしての機能を拡充させていきます。

また「CONPROSYS® PACシリーズ」の機能でハウス内の温度、湿度、CO2、感雨、養液のECなどをセンシングし、それらのデータをもとに、灌水、天窓の開閉、ボイラーの温度調整などをより細やかにハウス全体を自動でコントロールしていきたいと考えています。つまり、季節の変動に合わせて栽培管理を制御するなど、メロン栽培の匠の技を自動的に制御できる部分を増やしていきたいと考えています。

※「i-農業®」は株式会社大和コンピューター、「CONPROSYS®」は株式会社コンテックの登録商標です。

CONPROSYS®のご相談は高木商会へ

商品について相談する

関連キーワード
CONPROSYS コンテック 大和コンピューター ICT

関連記事

Categories
  • 注目商品
  • 雷製品特集
  • SIEMENS IPC
  • kitagawa-banner
  • 興和化成ダクト加工
  • AVEVA