自動化ラインにおけるRFID導入時の問題点と解決策―Ha-VIS LOCFIELD®ハーティング


RFIDとは
RFIDとはRadio Frequency Identificationの頭文字をとったもので、無線による個体認識技術を意味し、基本的にRFIDリーダーと呼んでいるコントローラー、リーダーに取り付けるアンテナ、IDデータを保存するためのタグで構成され、簡単な情報をシステム間でやりとりするものです。
このシステムは、電波を使って複数ある対象物の情報をタグから瞬時に取得することができるため、バーコードに比べ大幅な時間短縮が図れる技術といわれています。
RFIDの現状
この技術自体はさほど新しいものではなく、1980年代からすでに存在していましたが、当時利便性や費用対効果を疑問視する声もあり、1990年代ごろその技術が否定されていた時期がありました。しかし2000年以降から続いているネットワークインフラの充実や昨今のIoTといったキーワードの元、現在あらためて注目されています。
現在RFIDの技術は、わたしたちの生活にも浸透しており、ショッピングの会計や図書館の書籍貸出返却管理、ペットに埋め込むインプラント型ID、交通系のカード等で見かけることも多々あります。
事実日本の小売り大手でも最近、RFIDタグを商品に取り付けて会計処理の省力化に活用しています。世界最大手の小売業ウォルマート社では2005年、すでに全納入品へのRFIDタグ取付けの要求を仕入れ先100社に指示しています。
産業界におけるRFID
この技術は最もモノの管理が厳しく、省力化を日々検討されている産業界でも期待されていますが、導入時に検討しなければならない要素が多くあります。例えば産業界における自動化ラインを想定してみましょう。前段で紹介した事例の場合、何らかのかたちで人の手が介在してデータの読取精度を上げることができる、つまりリーダーとタグ間で通信が確立するまで人の手で補正・追随ができます。しかし、自動化ラインでは人の手による補正が期待できません。事実アンテナ部分だけとっても設置スペースや金属環境、移動体に取り付けたタグからどのようにして確実にデータを取得するか等の課題が出てきます(図1)。
ハーティングでは、Ha-VIS LOCFIELD®という標準同軸ケーブルをベースにした進行波アンテナで、これらの課題を解決することができます。
さまざまなアプリケーションや環境において、多様なレイアウトで構成可能で、簡単にアンテナを取り付けることができます。読み取り範囲は、適切なアンテナを選択調整することによって、数センチメートルから数メートルまで設定可能です。
Ha-VIS LOCFIELD®アンテナは、865〜928MHzのUHF周波数帯(EUまたはFCCバージョンが利用可能)でアンテナケーブルに沿って均一な電磁場を持つ進行波を生成し、ごくわずかな部分のみが放射されます。これにより、特に金属環境では反射や干渉が避けられる上、アンテナは、あらゆる種類のUHF RFIDリーダーに接続することができます。
また、アンテナ利得(ゲイン)は正確なアンテナ長に依存して約-7dBiであり、リーダーからアンテナに4WのRF電力を出力しても、2W ERP(EU)または4W EIRP(FCC)の制限に違反しません(図2)。
Ha-VIS LOCFIELD®アンテナの導入
プロジェクト単位で必要とする任意のRFID読み取りゾーンを設計できるHa-VIS LOCFIELD®アンテナは、産業用RFIDの一部のアプリケーションに最適です。
LOCFIELD®はLOCALized FIELDの略ですが、このアンテナは、アンテナケーブルの輪郭に沿って同心円状に電磁界を生成します。つまりケーブルアンテナを中心としたチューブ状のフィールドを展開するものと考えることができ、管の直径はRFIDリーダーのRF電力を変更することによって決定することができます。またリーダー、タグ、同軸ケーブルの選定と環境によって、読み取り範囲は数センチメートルから数メートルに調整することができます。
アプリケーションの例
- マシン内のツール識別
- コンベアライン
- ドア/ゲート
- スマートワークベンチ
- スマートシェルフ
- 列車または車両の真下
- フォークリフト
- リアルタイム在庫管理
- 19インチサーバーラックでのアセット管理
RFフィールドは、同軸ケーブルの全長に沿って移動します。 進行波はPCBで生成され、エネルギーが吸収されるフェライトコアに向かって移動します。
ケーブル長
異なる標準長が利用可能であり、選択の幅は拡大しています。アクティブ長は約30cmから6mまで提供できます。「アクティブ長」とは、PCBコアとフェライトコアの間のセクションを指します(図2)。PCB自体では、わずかに高い読み取り範囲(アンテナの他の部分と比較して数%)を持つことができます。
非常に長いLOCFIELD®アンテナ、例えば6mの場合、RF磁場はチューブ状というよりも“漏斗状”となります。すなわち、アンテナのPCB端部の読み取り範囲はフェライトコアの直前よりも高い性能を持ちます。
設置環境条件
LOCFIELD®アンテナは、サーバーラック、キャビネット、または他の金属エンクロージャー内部の金属環境においても使用することができます。ただし、アンテナを含むアクティブな部分は金属や地面に触れてはなりません。RFIDの性能が満足できるものではない場合は、まずアクティブなセクションまたはPCBが、金属または地面に接触していないかどうかを確認します。アンテナは、金属表面から少なくとも1cmの距離を持つ必要があり、表面から1cm離れるごとに読み取り範囲が増加し、5cmもしくはそれ以上の距離で最高の性能が得られます。 標準的なパッチアンテナとは対照的に、金属面はLOCFIELD®アンテナによって生成される波を反射しません。これはアンテナ特性と物理特性が異なるためです。金属表面は磁力線を吸収する傾向があり、読み取り範囲を減少させる可能性があります。金属面を利用して、特定の領域を遮蔽することによって読み取りゾーンを「形成する」することもできます。
アンテナを地面に直接置いた場合、波はアンテナに沿って移動することができず、読み取り範囲は非常に狭くなります。特にPCBは地面に触れてはなりません。
アンテナを取り付けるときは、ネットワーク、電力、データ、または信号に関係なく、パラレル・ラン・ケーブルに注意が必要です。アンテナに平行するケーブルは、LOCFIELD®アンテナから放出されるエネルギーを吸収し、読み取り範囲を減少させる可能性があります。
UターンによるRFフィールドの強化
LOCFIELD®アンテナは、任意の形状で配置することが可能です(アクティブ部分をクロスすることは不可)。その特性を利用して、Uターン上に配置するとRFフィールドを増強することができます。
予想した読み取り範囲が最初の設置で得られなかった場合などに手軽な解決策として効果的です。
Uターン(幅約4cm、高さ約5cm)は、読み取り範囲を約30%向上します。この手法は、さまざまな場面で活用することができます。より多くのエネルギーを放出すべき特定の地点にUターンを置くことができますし、アンテナに沿って複数のUターンを配置することもできます。
この場合、フェライト側に近いアクティブ部分に最初のUターンを直接行うことを推奨します。Uターン間は約1m(波長の半分の4倍)なければなりません。
以上ご紹介した製品や応用例はほんの一部ですが、他にも用途に応じた最適なソリューションを用意しておりますので、お問い合わせください。