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サーボモーターのノイズ対策の手法と実例:北川工業株式会社

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1. はじめに

近年、メカトロニクス技術の目覚ましい発展により、工場内の生産設備はさまざまな機械が自動化され24時間フル稼働、無人化ラインが構築されるようになってきました。さらに工場内のIT化も急速に進んでいます。一方でこれらの工場環境下でそれぞれの装置を正常に動作させるためには、電磁波環境の両立性(EMC)が重要な技術となります。しかしインバーターやサーボドライブ等の装置に組み込まれているパワー半導体の高速スイッチング動作による広帯域で、非常に高いレベルの電磁波ノイズの発生が誤動作の原因となっています。北川工業EMCセンターでは、それらの対策にも積極的に取り組み、さまざまな対策手法を技術開発してきました。その一部をご紹介します。

2. サーボモーターの放射ノイズ対策

①実験モデル

図1・2

図1、2のようにサーボアンプとサーボモーターは2mの距離で配置し、モーター電源線も2mとして3m法電波暗室で放射ノイズを測定しました。サーボモータードライブは供給電圧をPWM制御してスイッチングさせていますので、多くの高調波成分を含んだ電流がモーター電源線を流れます。しかし、高調波成分でも数MHz以上の高い周波数の電流は3相のモーター電源線だけを流れるのではなく、さまざまな経路を伝搬して流れてしまいます。これが、放射ノイズ発生の主原因であるコモンモード電流です。

図3・4

水平偏波、垂直偏波(図3、図4参照)ともに放射ノイズは、100MHz以下の周波数で高く放射しています。しかし、500MHz近辺でもレベルは高くはありませんが、ノイズを放射していて、さまざまな周波数の放射ノイズを出していることが分かります。

②ノイズ源とノイズ伝播経路

実験モデルでは、モーター電源線以外にサーボモーターとサーボアンプを繋ぐエンコーダー線、サーボアンプに電源供給する電源入力線の2種類のケーブルが配線されています。実験モデルでの放射ノイズは主に各ケーブルから放射されています(図5参照)。

図5

そこで、モーター電源線も含め、それぞれのケーブルのみからどれだけの放射ノイズが出ているか仕分けして水平偏波の測定を行いました。その結果が図6~図8です。

図6-8

モーター電源線からは、40MHz、50MHz、90MHz、エンコーダー線からは、40MHz、70MHz、170MHz、電源入力線からは、45MHz、55MHzと、それぞれ異なった周波数の放射ノイズのレベルが高くなっています。これらの合成の足し算で、実験モデルの水平偏波の放射ノイズとして測定されています。そのため、ノイズ対策は、それぞれのケーブルの対策が必要となりますが、今回の実験ではモーター電源線だけに絞って対策の手法を紹介します。

図9

まず、モーター電源線からの放射ノイズの主原因となるコモンモード電流を測定します。その時に使用する高周波電流プローブを図9で示します。この電流プローブはコモンモード電流の周波数特性を直接測定できます。今回の実験モデルでは、伝播経路が異なる2種類のコモンモード電流がモーター電源線に流れています。図10で示す通り、3相のモーター電源線を同相で流れ、リターンはアース線を流れるコモンモード電流(コモンモード①とします。)と、もう一つの経路として、3相モーター電源線とアース線を同相で流れ、リターンが空間や床面を伝搬するコモンモード電流(コモンモード②とします。)が流れています。

図10

そして、それぞれのコモンモード電流を電流プローブで測定した結果を図11(コモンモード①)、図12(コモンモード②)に示します。

図11-12

それぞれが異なる周波数特性を示しています。伝播経路の長さや伝播経路のインピーダンスなどが異なるためです。このように2つのコモンモード電流が流れることで、モーター電源線からノイズが放射されてきます。図6の放射ノイズで50MHz付近のノイズはコモンモード①が起因していることが分かり、90MHz付近の放射ノイズはコモンモード②が起因していることが、コモンモード電流を測定することで明確に解明することができます。しかしながら、このように2つの異なるコモンモード電流がモーター電源線に流れている場合のノイズ対策は、両者のコモンモード電流に気を配りながらの対策となります。片方だけ対策しても、もう片方からのコモンモード電流は対策できていないため、放射ノイズは止まりません。その事例を次の2−③の対策で示します。

③フェライトコアを用いた対策事例

フェライトコアをモーター電源線に入れて放射ノイズの対策をする場合の事例を紹介します。

図13

図10でコモンモード①を減衰させるためには、図13に示すようにアース線を外し3相のモーター電源線UVWのケーブルだけにフェライトコアを挿入することになりますが、その結果は、図14となります。

図14

ここで用いたフェライトコアの種類として、中周波対策用分割コアKRFC(図15)を選択しました。

図15

このKRFCは、30~100MHzで通常の高周波対策用分割コアに比べインピーダンスが高い(図16参照)ことが特長の新商品の分割フェライトコアです。

図16

今回の実験で用いたサーボモーターやインバーターなどの放射ノイズ対策にはKRFCは最適な周波数特性を持っています。しかし、このように高性能なコアを用いても、図14のように放射ノイズがほとんど低減できていません。なぜなら、同じケーブルに異なるコモンモード電流が流れている場合は、それぞれのコモンモード電流経路に合わせてケーブルを選択しフェライトコアを挿入しなければ放射ノイズを確実に低減できないからです。したがって、コモンモード①だけでなく、コモンモード②に対しても減衰させるためには、アース線も入れてモーター電源線UVWとアース線合わせて4本のケーブルにフェライトコアを追加して挿入しなければなりません(図17)。

図17

その結果、図18で示す通り、200MHz以下の全周波数で放射ノイズを低減することができました。

図18

このように、放射ノイズの主原因であるコモンモード電流がどのような伝播経路で流れているかを掴むことで、確実にノイズ低減させることができます。

3. おわりに

今回はフェライトコアでノイズ低減させる手法を紹介しましたが、他にもノイズ対策には、グランディング対策、シールディング対策など手法はさまざまあります。また、機会があれば、それらを用いた対策手法などの紹介もさせていただきます。

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