IIoT(Industrial Internet of Things)の要となるEthernetスイッチとその選定方法
製造現場におけるIoT導入のファーストステップは、工場内の「見える化」だと一般的に言われています。IoTが注目される以前から、HMI機器で工場の見える化の最先端を行く株式会社デジタル(以下デジタル社)は、ネットワークを構築する機器が見える化の要であるとして、Ethernetスイッチを多数ラインアップしています。
本稿では、「見える化」のプロフェッショナルであるデジタル社の視点で、IoT時代のEthernetスイッチについて各種説明、選定方法などをご紹介します。
工業用Ethernetスイッチの種類と特徴
「見える化」によって発見された企業の様々な課題解決を目的として、必然的にIIoTが注目され、製造現場のデータネットワークがその要として一層重要視されています。そして、これらのネットワーク構築に必要不可欠である工業用Ethernetスイッチの市場も急速に拡大しています。参考までに、以下の図1は工業用Ethernetスイッチの業種ごとのグローバル市場の指標です。すべての業種において成長が期待され、2019年には全体で約2倍(2014年比)となり、急速に普及していくことが予想されています。
一概に工業用Ethernetスイッチと言っても多くのタイプがあり、一般的には、シンプルにプラグアンドプレイのアンマネージドスイッチと、ネットワーク機能を向上させるマネージドスイッチに大きく分類されます。使用されるケーブルも、オフィスなどでよく見かけるRJ-45コネクタのCAT5Eケーブルから、IP67の環境性能を有するM12コネクタケーブル、長距離通信やノイズ対策に効果的な光ファイバーなどがあり、ユーザーの用途やニーズによって最適な機種を選択することができます。
工業用Ethernetスイッチは一般オフィス用のものと比較して、ハードウェアは24時間運転をベースに耐環境性能などにおいて工業規格(ULやIEC規格)に適合した試験評価を行い、それが製品に確実に反映されたものです。その中身においても、一般オフィス用はパソコンが扱う画像や映像などの大きなデータパケットを想定したチューニングに対して、工業用は制御データなどの小さなパケットに重点を置いたチューニングとなっています。
工業用EthernetスイッチConneXiumシリーズ
デジタル社では、工業用EthernetスイッチConneXiumシリーズをリリースしています。ユーザーの現場、用途、ニーズに対応可能な数多くのラインアップを用意しており(図2参照)、工業規格UL508(UL61010-1)を取得した電力やプラントの制御・計装から製造現場にいたるまで幅広い範囲をカバーした高信頼性の工業用Ethernetスイッチです。
IIoTではインターネットを通じてあらゆる情報のやり取りが行われ、製造現場にある個々の機器やデバイスについて今までと比較にならないデータ量かつ複雑なネットワーク環境にさらされることになります。 そこで注目されているのはマネージドスイッチになります。
ConneXiumシリーズのマネージドスイッチには、ユーザーの使用目的やネットワーク構成によって4段階から選択でき、機器やデバイスを接続したネットワークのパフォーマンスを効率的にリスクの少ない運用を提供します。 一方で現在普及しているアンマネージドスイッチは、他のネットワークの影響を受けにくくネットワーク障害に対してもリスクの少ない比較的小規模でかつシンプルなネットワーク構成に適した機種と言えます。
ConneXiumシリーズのマネージドスイッチのポイントは、ネットワークの冗長化、高度なデータスイッチング、セキュリティ、ネットワーク診断の4つの機能となり、以下にその一部をご紹介します。(機種によってサポートされる機能に差があります。)
- ネットワークの冗長化
- ネットワーク障害から自動復帰させるRSTP
- 強固なネットワークの構築を提供するHIPER-RingやRing Coupling
- 供給電源の二重化
- 高度なデータスイッチング
- 必要なマルチキャストのみフィルターするIGMP snooping, GMRP
- 通信データの優先度を管理するQoSやDSCP
- 仮想ネットワークグループを形成するVLAN
- セキュリティ
- SNMP v3によるネットワークセキュリティー
- ポート単位でのアドレスによるアクセス制限
- ネットワークの診断
- ネットワークの状態監視をするSNMP
- 障害要因の分析が可能なイベントログ
ConneXiumシリーズでは、これらの高度な機能をWebブラウザー対応ツールによりシンプルかつ簡単に設定でき、イーサネットを利用したフィールドネットワークのEthernet/IPやPROFINETをDSCP(QoS)やVLAN対応機能を使ってセーフティデータやリアルタイムデータの優先制御も簡単に設定出来ます。
デジタル社製HMI機器とConneXiumのシステム構成例
デジタル社では、IIoTの土台となる製造現場からのデータを集約する機器としてPro-face HMI製品を推進し、多くのユーザーからのその簡単かつ効果的なソリューションに支持をいただき採用されています。同時に機器を接続するネットワークの信頼性の向上にも考慮し、Pro-face HMI製品を接続するネットワークグループをはじめ、データサーバー、SCADAなどの接続にConneXiumシリーズのライトマネージドスイッチ(型式:TCSESL043F23F0)を推奨しています(図3)。
ライトマネージドスイッチは、ConneXiumシリーズマネージドスイッチ製品のエントリーモデルですが、DSCP (QoS)やVLAN対応機能を搭載し、Ethernet/IPやPROFINETのフィールドネットワークに対応可能な上、ネットワークの冗長性を高めるRSTP、ネットワーク監視のSNMPなど、製造現場のネットワーク環境において最大の効果を発揮するRJ-45コネクタを4ポート備えた機種となっています(下記仕様参照)。
適切なネットワーク機器を選定する事で、ユーザーのネットワークを不用意な障害から守り信頼性を一段向上させるとともに、不要なデータの排除によるネットワークの効率的な利用、ネットワークのセキュリティ強化にも貢献します。
ライトマネージドスイッチ仕様
ここでは、図3にて使用しているライトマネージドスイッチの主な仕様をご紹介します。
ライトマネージドスイッチ(型式:TCSESL043F23F0)
- ポート数
- 4
- ポート種類
- 10BASE-T/100BASE-TX
- ケーブルおよびコネクタ
- CAT5E、RJ-45
- ストアアンドフォワード
- ○
- マルチアドレス機能
- ○
- リンクコントロール
- ○
- オートポラリティ
- ○
- オートネゴシエーション
- ○
- オートクロッシング
- ○
- SNMP v1/v2/v3
- ○
- Alarm traps
- ○
- LLDP
- ○
- Password
- ○
- Single ring
- ○
- RSTP
- ○
- Logs file
- ○
- QoS
- ○
- 定格電圧
- 24Vdc(9.6~32Vdc) SELV
- 最大消費電力
- 2.35W
- 使用環境温度
- 0 ~ 50℃
- 外形寸法
- W25 x H114 x D79mm
- 質量
- 103g
- 取り付け方法
- DINレール、35mm
見える化のプロフェッショナル
デジタル社は、昨今注目されていますIIoTに先んじて製造現場の「見える化」をテーマに、積極的にGPシリーズを始めとしたPro-face HMI製品にイーサネットI/Fを搭載し、HMIが得意とする製造現場のあらゆる機器に接続、同時にHMIを経由して収集した現場データを活用出来るソリューションとしてPro-Server EX、GP-Viewer EXなどを提供してきました。最近ではスマートフォンを活用したPro-face Remote HMIも提供しています。